人材不足が深刻化し、人々の働く価値観も変化するなか、優秀な人材を確保することが非常に難しくなっています。
その理由として、従来の方法では優秀な人材かどうか見極めることが不十分だからです。現在の主流である過去の経験や行動から判断する「コンピテンシー評価」だけでは、変化の激しいビジネス環境に対応できない可能性があります。
そこで注目されているのが、未来の可能性に焦点を当てた「ポテンシャル・モデル」です。本記事では、この新しい人材評価の方法とその導入メリット、さらに成功へのステップについて詳しく解説します。
【目次】
- コンピテンシー評価の限界:過去の成功が未来を保証しない理由
- 人材発掘の第4の時代:「ポテンシャル・モデル」とは
- 未来を切り拓く「伸びしろ」の4つの要素
- 3.1 好奇心
- 3.2 洞察力
- 3.3 共鳴力
- 3.4 胆力
- ポテンシャル・モデル導入のメリットと課題
- 4.1 導入のメリット
- 4.2 導入の課題
- ポテンシャル・モデルを効果的に活用するためのステップ
- まとめ
コンピテンシー評価の限界:過去の成功が未来を保証しない理由
これまで多くの企業は、人材評価において「コンピテンシー評価」を重視してきました。これは、過去の行動や成果、スキルや知識に基づいて人を評価する方法です。しかし、経営環境が目まぐるしく変化する現代では、過去の成功体験が未来でも同じように通用するとは限りません。さらにいうと過去と同じ行動するとも限りません。
実際私も経験したことがあります。
過去の実績やなぜそういう行動をとったかなど、思考の癖までかなり詳細に確認し、必要な要件を満たしていたことから採用した方が、実際に入社してみると期待した行動ができず、半年ほどで退職してしまいました。
これは新しい環境や変化に適応できなかったことが大きいのですが、新しい技術やビジネスモデルが次々と登場する中、過去の実績だけで人材を評価することはリスクを伴うことを証明しています。コンピテンシー評価では、未来の不確実性に対応できる人材を見極める力が不足しているのです。
人材発掘の第4の時代:「ポテンシャル・モデル」とは
この「ポテンシャル・モデル」を提唱した、エゴンゼンダーのコンサルタント クラウディオ・フェルナンデス=アラオス氏は人材発掘の歴史を4つの時代に分類しています。
- 第1の時代:身体的能力評価
- 労働力としての体力や持久力など、身体的な能力に基づく評価。
- 第2の時代:IQ評価
- 知能指数や論理的思考力など、知的能力に焦点を当てた評価。
- 第3の時代:コンピテンシー評価
- 過去の行動やスキル、成果に基づく評価。
- 第4の時代:ポテンシャル・モデル
- 未来の可能性や成長性、「伸びしろ」に注目した評価。
現在はこの「第4の時代」であるポテンシャル・モデルが注目を集めています。
なぜなら、ある人が今日は特定の職務をこなせたとしても、その人に成功をもたらした要因が、明日になって競争環境が変わったり、会社の戦略が変更されたり、社内のグループが変わったりしたら、通用しなくなるかもしれないからです。
これからは、潜在的な能力や成長可能性を重視し、未知の課題にも柔軟に対応できる人材を見つけ出すこと重要なのです。
未来を切り拓く「伸びしろ」の4つの要素
ポテンシャル・モデルは、好奇心、洞察力、共鳴力、胆力 という4つの要素から構成されています。
3.1 好奇心
「とにかく知りたい」「なんでも吸収したい」など、新しいことへの強い興味を持ち、未知の領域にも積極的に挑戦する姿勢。継続的な学習意欲や革新的なアイデアの源泉となります。
3.2 洞察力
さまざまな情報を集め、整理し、物事を多角的に分析することで、本質を見抜く力。そして、集めた情報から共通項をつなげる筋を見出す力。複雑な問題にも的確に対応し、全体像を把握できます。
3.3 共鳴力
感情と論理を使って、自身の想いや説得力のあるビジョンを伝え、周囲の人々と共感し、信頼関係を築く力。チームをまとめ、協力して目標を達成するために不可欠です。
3.4 胆力
困難な状況や大きな挑戦にも臆せず、果敢に立ち向かう意志の強さ。迷いがあっても、それらをすっぱり断ち切って覚悟を決め、リスクを恐れず行動できるリーダーシップを発揮します。
この4つの要素をもとに掘り下げて質問し、統合し評価すると、その人の「ポテンシャル=伸びしろ」が見えてきます。
ポテンシャル・モデル導入のメリットと課題
ポテンシャル・モデルを導入することで、以下のメリットを得ることができます。
4.1 導入のメリット
- 優秀な人材の早期発掘
- 従来の「コンピテンシー評価」は、過去の実績に基づく評価が中心でしたが、「ポテンシャル・モデル」は未来の成長性に着目します。このモデルでは、好奇心や洞察力、共鳴力、胆力といった、環境の変化や新たな挑戦にも柔軟に対応できる資質を重視するため、従来の評価方法では見逃しがちな才能を持つ人材を、早い段階で見つけることが可能です。
- 人材育成の効率化
- 「伸びしろ」のある人材は、学習意欲が高く、自らの成長に積極的です。このような人材に対し、適切な育成プログラムや研修を提供することで、短期間で効果的にスキルを磨き、即戦力化が期待できます。
- 組織全体の活性化
- 成長意欲が高く、ポジティブな姿勢を持つ人材が集まることで、組織全体のモチベーションが向上します。このような人材は、革新的なアイデアや解決策を生み出す源泉となり、チームメンバーにも好影響を及ぼします。特に変革期においては、柔軟で前向きな考えを持つ人材が求められ、組織全体のダイナミズムを引き出す原動力となります。
4.2 導入の課題:評価者に求められる高いスキル
- 評価の難しさ
- ポテンシャルを正確に見極めることは容易ではありません。成長性や潜在能力は、スキルや経験とは異なり、外見からは見えにくい要素です。そのため、評価者には高度な面接技術や観察力が求められます。特に、未来の行動や思考の傾向を予測するには、被評価者の過去の行動や反応をもとに、どのように未来の環境に適応できるかを見抜く洞察力が必要です。
- 評価者のバイアス
- 評価者の主観や無意識の偏見が、ポテンシャル評価に大きな影響を与える可能性があります。特に、これまでの評価方法に慣れている評価者は、潜在的な成長可能性を見落としがちです。このようなバイアスを排除するには、評価者が自身の無意識の偏見を認識し、的確に補正する技術を身につける必要があります。
- 評価基準の統一
- 評価者によって評価基準が異なると、ポテンシャル評価の信頼性が損なわれる可能性があります。企業全体で統一された評価基準を確立し、評価者間のばらつきを最小限に抑えることが不可欠です。これにより、公平かつ一貫性のある評価が実現し、信頼性の高い人材選定が可能となります。
ポテンシャル・モデルを効果的に活用するためのステップ
ポテンシャル・モデルを導入し、効果的に人材を評価するためには、以下のステップが有効です。
- 評価者のトレーニング
- 評価者には、潜在能力を見極めるためのトレーニングが必要です。具体的には、心理学的知識や行動観察技術、さらには面接の質問設計スキルを高めることで、より正確かつ客観的な評価ができるようになります。
- 評価ツールの活用
- アセスメントツールや心理検査を導入することで、評価の客観性を確保できます。たとえば、潜在的な強みや弱点を可視化することで、従来の面接では気づきにくい成長の可能性を明らかにすることができます。これにより、より精度の高い人材選定が可能になります。
- フィードバックシステムの構築
- ポテンシャル評価の結果を、建設的なフィードバックとして被評価者に伝えることで、彼らの成長を促進します。このフィードバックは、具体的な行動の改善点や学びの機会を示すだけでなく、ポジティブな面にも焦点を当て、成長意欲を引き出すことが重要です。
- 評価プロセスの標準化
- 明確な評価基準とプロセスを設定し、評価者全員が一貫して適用できるようにします。これにより、評価の信頼性が向上し、組織全体での公平な人材選定が実現します。
まとめ
いかがでしょうか。
人材発掘の「第4の時代」を迎え、過去の実績に頼るコンピテンシー評価から脱却し、「伸びしろ」を見極めるポテンシャル・モデルの導入が重要です。
その効果を最大化するためには、評価者のスキル向上や評価プロセスの整備が不可欠です。未来を切り拓く人材を発掘・育成するために、ポテンシャル・モデルの導入と評価者のスキル向上をぜひご検討ください。
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