問題は「担当がいない」ことではない
採用の実務が回る仕組みが、あるかどうか
専任の採用担当がいない。経営者や現場が、本業のかたわらで採用を兼務している。だから動き出しが遅れ、母集団が作れず、応募が来ても対応が後手に回る。こうした悩みは、沖縄の中小企業から本当によく聞きます。ここで押さえておきたいのは、問題の捉え方です。悩みの本質は「採用担当がいないこと」そのものではありません。「採用の実務が回る仕組みがないこと」です。だから、解決策も「専任を雇う」だけではありません。専任を置くのは一つの手ですが、中小には置く余裕がないことも多く、置いても一人に依存する危うさが残ります。この記事では、採用担当不在で何が起きているのかを整理し、兼務を仕組み化する・担当を育てる・外部に任せるという3つの選択肢を、自社の身の丈で選ぶための考え方をお伝えします。
📋 目次
- 結論:問題は「担当の不在」でなく「実務が回らないこと」
- 採用担当がいないと、何が起きるか
- なぜ中小は専任を置けない・置いても難しいのか
- 選択肢は3つ(兼務・育成・外部化)
- まず兼務でもできる最小限の仕組み
- 外部(採用代行)に任せるとは
- 専任採用と外部化、費用の考え方
- やりがちな失敗
- 自社診断とFAQ
- まとめ:今日から動かす順番
🎯結論:問題は「担当の不在」でなく「実務が回らないこと」
採用がうまくいかない原因を「担当者がいないから」と捉えると、解決策が「専任を雇う」だけに狭まります。本当の問題は、採用の実務が回る仕組みがないこと。仕組みは、専任を置かずとも作れます。
「うちは採用担当がいないから、採用が弱い」。そう感じている中小企業は多いはずです。でも、少し立ち止まって考えてみてください。困っているのは、「担当という人がいない」ことでしょうか。それとも、「募集の設計、応募への対応、面接の段取りといった実務が、回っていない」ことでしょうか。多くの場合、後者です。担当者は、実務を回すための一つの手段にすぎません。
この捉え方に立つと、選択肢が広がります。実務を回す方法は、専任を雇うだけではないからです。兼務を仕組みにして回す、時間をかけて担当を育てる、実務を外部に任せる。どれも「採用の実務を回す」ための道です。「担当がいないから採れない」と立ち止まるのでなく、「実務をどう回すか」で考える。ここから、自社に合う道が見えてきます。
言い換えれば、「専任を雇うかどうか」という一つの問いに縛られる必要はない、ということです。多くの中小企業が、この問いの前で止まってしまいます。雇う余裕はないが、このままでは回らない——その板挟みで、結局何も変えられずに毎年を過ごす。ですが、選択肢は雇うか雇わないかの二択ではありません。実務を分解し、回る形をつくるという発想に立てば、今の規模のまま、無理なく踏み出せる道があります。
思い込み③「採用担当がいないから採れない」:担当の有無が、採否を決めるわけではありません。決めるのは、採用の実務が回る仕組みがあるかどうかです。専任を置かなくても、仕組みと外部の活用で、採用は回せます。「担当がいない」を言い訳にせず、「実務をどう回すか」に問いを変えてください。
📉採用担当がいないと、何が起きるか
採用担当が不在の会社では、決まった問題が起きます。動き出しが後手になる、作業が特定の人に属人化する、ノウハウが溜まらない、応募を取りこぼす。まず、自社で何が起きているかを見てください。
1
後手に回る
本業に追われ、募集の着手が遅れる。母集団が作れず出遅れる
2
属人化する
採用がその人のやり方に依存。休むと止まり、辞めると消える
3
溜まらない
振り返りがなく、毎回ゼロから。ノウハウが積み上がらない
とくに深刻なのが、取りこぼしです。応募が来ても、本業の合間に対応するため、連絡が遅れる。その間に、候補者は他社に決まってしまう。せっかくお金をかけて募集しても、対応の遅れで逃していては、もったいない話です。採用は、動き出しの早さと、応募への素早い対応が効きます。担当がいないと、この両方が弱くなります。
「気づいたら出遅れていた」を繰り返していないか:採用担当が不在の会社に多いのが、「今年も気づいたら時期を逃していた」という繰り返しです。本業が忙しいと、採用は後回しになります。しかし、採用は待ってくれません。動き出しの遅れは、母集団の細さ、応募の少なさ、そして取りこぼしに直結します。この繰り返しを断つことが、担当不在の会社の課題です。
🏝なぜ中小は専任を置けない・置いても難しいのか
「専任を雇えばいい」と言うのは簡単ですが、中小企業には難しさがあります。人件費の負担、採用できる人材の確保、そして一人に依存するリスク。専任化が、必ずしも最適解ではない理由があります。
専任を置く余裕がない
採用の専任担当を一人雇うには、当然、人件費がかかります。採用が年間を通じて途切れないほどの規模なら見合いますが、必要なときだけ採用する中小企業では、専任を一人抱える負担が重すぎることがあります。さらに、そもそも採用に詳しい人材を採ること自体が難しい。採用担当を採用するのに苦労する、という入れ子の問題も起きます。とくに、専任人事を置きにくい小規模な会社が多い沖縄では、この難しさは身近です。
一人に依存するリスク
仮に専任を置けても、一人だけだと別のリスクが生まれます。その人のやり方に採用が依存し、休めば止まり、辞めればノウハウごと失われます。中小企業では、採用担当が一人、というケースがほとんどです。その一人が抜けた瞬間、採用の力がゼロに戻ってしまう。専任化は、属人化のリスクを、一人に集約するだけになることもあります。だからこそ、専任を置くこと自体を目的にせず、実務が回る仕組みを持つことが大切です。
思い込み①「専任の採用担当を置けば解決」:唯一の解ではありません。中小には専任を置く余裕が乏しく、置いても一人に依存すれば、その人の退職でノウハウが消えます。専任化は選択肢の一つであって、ゴールではありません。大切なのは、担当を置くことより、採用の実務が回る仕組みを、無理なく持つことです。
🔀選択肢は3つ(兼務・育成・外部化)
採用の実務を回す方法は、大きく3つです。兼務を仕組み化する、担当を育てる、外部に任せる。どれが自社に合うかは、採用の頻度・規模・社内の余力で決まります。組み合わせも可能です。
| 選択肢 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| ① 兼務を仕組み化 | 採用が年に数回・小規模。まず自社で回したい | 役割と手順を決めないと属人化・後手が続く |
| ② 担当を育てる | 採用が継続的にあり、社内に育てる余力がある | 時間がかかる。一人依存のリスクは残る |
| ③ 外部に任せる(採用代行) | 実務に手が回らない・動き出しを早めたい | 丸投げは不可。コアは自社に残す |
この3つは、どれか一つを選ぶだけでなく、組み合わせられます。たとえば、実務の一部(募集の設計や応募対応)を外部に任せつつ、見極めや意思決定は社内で担う。あるいは、当面は外部に任せて回しながら、並行して社内の担当を育てる。自社の採用の頻度と、社内の余力を見て、無理のない配分を選んでください。大切なのは、「実務が回る状態」をつくることです。
選ぶときの軸は、シンプルです。ひとつは「採用の頻度と量」。年に一度、数人だけなら、専任を置くのは重すぎます。継続的に採り続けるなら、社内に担当や仕組みを持つ意味が出てきます。もうひとつは「社内の余力」。本業に追われて実務に手が回らないなら、外部化が現実的です。時間をかけて育てる余裕があるなら、担当育成も選べます。この2つの軸で自社を見れば、3つのうちどれに寄せるべきかが、自然と見えてきます。最初から完璧な体制を目指す必要はなく、まず動く形をつくり、あとから調整すればよいのです。
🛠まず兼務でもできる最小限の仕組み
すぐに外部化や採用ができなくても、兼務のままできることがあります。鍵は、採用の仕事を「ノンコア(実務)」と「コア(判断)」に分け、実務を仕組み化して属人化を防ぐことです。
ノンコアとコアを分ける
採用の仕事は、大きく2つに分けられます。ひとつは、募集の設計、媒体の運用、応募者への連絡、面接の日程調整、進捗の管理といった「実務(ノンコア)」。もうひとつは、自社の魅力を伝える、候補者を見極める、採否を決めるといった「判断(コア)」です。この2つを分けると、やるべきことが整理されます。コアは会社にしかできませんが、ノンコアは、手順を決めれば誰でも回せますし、外部にも任せられます。
「誰が・何を・いつ」を紙一枚に
兼務で回すなら、まず「誰が・何を・いつやるか」を紙一枚に決めます。募集を出す時期、応募が来たら誰がいつ連絡するか、面接の日程は誰が組むか。これを決めておくだけで、後手と属人化が減ります。担当がいなくても、手順が共有されていれば、採用は回り始めます。完璧でなくてかまいません。まず作って、回しながら直していくのが現実的です。
- ✓採用の実務を「ノンコア/コア」に分ける任せられる作業と、会社が担う判断を切り分ける
- ✓「誰が・何を・いつ」を紙一枚に決める募集時期・応募対応・日程調整の担当と期限
- ✓応募には素早く連絡するルールを決める取りこぼしの多くは、対応の遅れから起きる
🤝外部(採用代行)に任せるとは
採用の実務が回らないなら、その実務を外部に任せる選択肢があります。採用代行(RPO)は、募集設計・応募対応・日程調整といったノンコアを担い、社内は見極めなどのコアに集中できます。丸投げではなく、分担です。
ノンコアを任せ、コアを残す
採用担当が不在の会社にとって、外部化は現実的な選択肢です。採用代行は、手間のかかる実務——募集の設計、媒体の運用、応募者への連絡、面接の日程調整、進捗の管理——を巻き取ります。これにより、動き出しの遅れや取りこぼしといった、担当不在で起きていた問題を減らせます。専任を一人雇うより、必要なときに必要な実務だけを任せられるのも、中小に合う点です。
もう一つの利点が、動き出しの早さです。担当不在の会社は、本業に追われて着手が遅れ、母集団が作れないまま出遅れがちでした。実務を外部に任せれば、採用のスタートを早められます。優秀な人ほど早く決まるため、この動き出しの早さは、そのまま採用力になります。「毎年、気づいたら出遅れていた」という悪循環を、外部の力で断てるのです。社内は、その間に生まれた余力を、候補者と向き合う時間や、本業に振り向けられます。
思い込み④「外部に任せる=丸投げ」:違います。任せるのは実務(ノンコア)で、自社の魅力を伝えることや、候補者を見極めることは、会社に残すコアです。ここまで丸投げすると、自社に合わない採用になります。良い外部パートナーは、任せる部分と会社が担う部分を切り分けて提案してくれます。分担であって、丸投げではありません。
外部化を検討するなら、採用代行がどういうもので、何を任せられるかを知っておくと、判断がスムーズです。あわせて、自社の採用が「採るだけ」で終わらず、入った人が定着するところまで見据えられると、なお効果的です。採用代行の中身については、別の記事で整理しています。
💴専任採用と外部化、費用の考え方
「外部に任せると高そう」と感じるかもしれませんが、専任を一人雇う費用と比べる視点が大切です。専任の人件費は継続的にかかり、必要なときだけ外部に任せる形と、どちらが自社に合うかで考えます。
費用を考えるとき、外部化の金額だけを見ると「高い」と感じがちです。しかし、比べるべきは、専任を一人雇った場合の費用です。専任の採用担当を雇えば、その人件費は、採用があってもなくても、毎月かかり続けます。一方、外部に任せる形なら、必要な実務を、必要なときに任せられます。採用が年間を通じて途切れないほどの規模でなければ、外部化のほうが、身の丈に合うことがあります。
大切なのは、金額の大小だけでなく、「何にお金を払い、何が得られるか」で比べることです。専任を雇えば、社内に人とノウハウが残る一方、一人依存のリスクを負います。外部に任せれば、実務が回り、動き出しが早まる一方、社内にノウハウは溜まりにくい。自社の採用の頻度と規模、社内に残したいものを見て、判断してください。具体的な費用の考え方は、費用の記事で整理しています。
🚧やりがちな失敗
採用担当不在の会社がつまずくのは、「担当を置く/置かない」の二択で考えてしまうことです。先に知っておけば避けられる失敗を、まとめて押さえます。
✕ 兼務のまま仕組みを作らない
手順を決めず片手間で続け、後手と取りこぼしを繰り返す。
→ ノンコアを仕組み化し、応募対応を素早く
✕ 専任を置けば安心と思う
一人に依存し、その人の退職でノウハウごと失う。
→ 専任でも仕組みを残す。一人依存を避ける
✕ 外部に丸投げする
見極めや魅力づけまで任せ、自社に合わない採用に。
→ 実務は任せ、コアは会社に残す
✕ 採って終わりにする
定着を考えず、辞められて募集を繰り返す。
→ 採用と定着をセットで設計する
思い込み②「経営者が片手間で兼務すれば十分」:採用は、通年で走り続ける仕事です。本業のかたわらでは、動き出しが遅れ、母集団が作れず、応募を取りこぼします。兼務が悪いのではなく、仕組みなしの兼務が問題です。兼務で回すなら、実務を仕組み化する。それが難しいなら、外部に任せる。片手間のまま放置しないことが大切です。
🩺自社診断とFAQ
自社は3つの選択肢のどれが合うか。次の目安で、方向が見えます。採用の頻度・規模・社内の余力から考えてください。
| 自社の状況 | 合いやすい選択肢 |
|---|---|
| 採用は年に数回・小規模/まず自社で | 兼務を仕組み化(+必要なら一部を外部化) |
| 採用が継続的/社内に育てる余力がある | 担当を育てる(+仕組みで一人依存を回避) |
| 実務に手が回らない/動き出しを早めたい | 外部に任せる(ノンコアを任せコアを残す) |
| 毎年出遅れている/取りこぼしが多い | まず外部化で回し、並行して社内を整える |
Q. まず何から始めればいいですか?
採用の実務を「ノンコア(作業)」と「コア(判断)」に分けることからです。分ければ、自社で回す部分と、任せられる部分が見えます。そのうえで、兼務で仕組み化するか、外部に任せるかを選びます。いきなり専任を雇うかどうかで悩むより、まず実務を分解するのが先です。
Q. 専任を雇うべきタイミングは?
採用が年間を通じて途切れず、専任の人件費に見合う規模になったときが、一つの目安です。ただし、専任を置く場合も、その人だけに依存しないよう、手順や仕組みを残しておいてください。規模が小さいうちは、兼務の仕組み化や外部化のほうが、身の丈に合うことが多くあります。
Q. 外部に任せると、社内にノウハウが残らないのでは?
丸投げならその通りですが、分担すれば残せます。実務を任せつつ、見極めや意思決定を社内で担い、外部とやり取りする中で進め方を学べば、ノウハウは社内にも蓄積します。将来、社内で回したいなら、そのつもりで関わることが大切です。
Q. 採用より、まず定着では?
その視点は正しいです。採って辞められる状態で募集を増やしても、担当不在の負担は減りません。採用の実務を整えると同時に、入った人が定着する仕組みも考える。採用と定着はセットで、両方を見据えると、募集の回数そのものが減っていきます。
✅まとめ:今日から動かす順番
採用担当が不在でも、採用は回せます。大切なのは、「担当がいない」を嘆くのでなく、「採用の実務が回る仕組み」をつくることです。実務をノンコアとコアに分け、兼務を仕組み化するか、育てるか、外部に任せるかを、自社の身の丈で選ぶ。専任を置くことがゴールではありません。実務が回り、動き出しが早まり、取りこぼしが減る。その状態を、無理なくつくることが答えです。
採用担当不在の悩みを解くためにやること
- 問題を「担当の不在」でなく「実務が回らないこと」と捉え直す
- 担当不在で起きること(後手・属人化・溜まらない・取りこぼし)を把握する
- 専任化は唯一解ではない。余裕・一人依存のリスクを踏まえる
- 選択肢は3つ(兼務の仕組み化・担当育成・外部化)。組み合わせも可
- 採用の実務をノンコア(作業)とコア(判断)に分ける
- 兼務なら「誰が・何を・いつ」を紙一枚に。応募対応は素早く
- 外部化は丸投げでなく分担。コアは社内に残す
- 費用は「専任の人件費」と比べて考える。採用と定着はセットで
採用担当がいなくても、採用は回せます
採用の実務のどこが回っていないかの切り分けから、募集設計・応募対応・面接調整といったノンコア業務の代行、定着の設計まで。専任を雇う前に、自社に合う進め方をご提案します。「毎年出遅れる」「取りこぼす」を、今年で終わらせましょう。採用の進め方を相談する
※本記事は、採用担当者が不在・専任を置いていない中小企業が、採用体制を検討する際の一般的な考え方を整理したもので、特定の効果や採用成功を保証するものではありません。採用担当不在で生じやすい課題(着手の遅れ・属人化・ノウハウの非蓄積・応募の取りこぼし等)は一般的な傾向であり、自社の実態は、応募数・採用数・対応の状況などの実データでご確認ください。専任担当の人件費や、採用代行(RPO)などの外部委託の費用は、規模・業務範囲・依頼内容により大きく異なるため、本記事では具体的な金額を記載していません。比較・検討にあたっては、複数社からの見積もりや、自社の採用頻度・規模をふまえてご判断ください。雇用契約・就業規則・労務に関わる事項は、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。記載の選択肢・手順はモデルケースであり、自社の状況に応じた調整が必要です。






