「情報の非対称性」が起こす採用市場での「逆選択」とは

「応募はあるが欲しい人材からの応募がない」という採用に関する悩み、よく聞きますよね。ある沖縄県内の求人媒体の調査によると、20%の企業が「ターゲット以外からの応募が多い」という課題を抱えているというデータがあります。これは採用したい人材要件が明確にされていないことが主な要因ですが、それ以外に「情報の非対称性による逆選択」という現象が発生しているということが考えられます。ここでは「情報の非対称性による逆選択」とは何なのか、それが採用とどう関係があるのかを解説します。

「情報の非対称性」とは

「情報の非対称性」とは経済学の用語で、ある市場における取引の主体である売り手と買い手との間で、保有する情報に差がある状態のことをいいます。

実はこの情報に差があるということが、市場に非常に大きな影響を与えます。それが「逆選択」という現象です。この現象についてG.A.アカロフという経済学者が「レモン(不良品)の市場」という論文で説明しています。

ある中古車販売の市場があります。このとき売り手(ディーラー)は中古車に関して多くの情報を持っています。水没した車、エンジン内部に傷があるなど見ただけでは分からないことも、すべて知っています。一方、中古車を買おうとしているお客さんはそうした情報はありません。

これが「情報の非対称性」です。
では「情報の非対称性が起こす逆選択」とは何か説明してきます。

先ほどの中古車市場の中で、A、Bふたつの中古車販売会社があるとします。Aは良質の中古車を110万円で販売してようと考えています。Bは程度の悪い中古車を50万で販売しようと考えています。一方中古車を購入しようとしているお客さんは、良質の車であれば120万円、程度が悪ければ60万円くらいまで払えると考えています。そこで統計学的な買値(期待値)は(120万円×1/2)+(60万円×1/2)=90万になります。

ここでお客さんは買値の90万で中古車を買おうとします。中古車販売Aは良質な中古車なので110万円です。しかし、ここで情報の非対称性があり、良いか悪いか判断できないため、110万円は払えません。
その結果、お客さんは程度の悪い中古車をBから50万で購入します。

するとどうなるか。
良質な中古車を販売するAは市場から撤退し、結果的に程度の悪い中古車しか市場に残らないという状況になります。ちなみに、なぜ「レモンの市場」なのかというと、アメリカの俗語でレモンは質の悪い中古車を意味するからです。

ここで重要なのは、登場したそれぞれの主体(中古車販売A、B、お客さん)は非合理的な行動はしていないということです。正しい行動をとっているのですが、情報の非対称があることで結果的に良質な中古車が市場からいなくなるという逆の結果になるため「逆選択」と呼ばれています。

採用市場での「逆選択」とは

では先ほどの話を採用に置き換えて考えてみます。
ストレートに言うと特に沖縄の採用市場では「逆選択」が起こっていると思っています。
その理由を説明していきます。

まず採用する企業の立場を先ほどの中古車市場のお客様に置き換えます。新たな人材を採用するにたり、優秀な人には月30万払ってもいいと思っており、一般的な社員だと月15万なら払ってもいいと思っています。ただどういう人材が採用市場にいるか分からないうえ、いきなり高い給与は払えないので、間を取って(30万+15万)×1/2=22.5万円で募集するとします(雇用形態は正社員)。

ここで優秀な求職者Aと一般的な求職者Bがいます。Aは大手企業での経験があり、30万の給与でした。Bは正社員でしたが、デスクワークなどはしたことなく給与は17万でした。

するとどうなるか。
Aは募集している条件、特に給与が合わないためもちろん応募しません。Bは正社員で給与も前職よりいいので応募しようと考えます。するとAのような優秀な人材は条件が合う求人がないため、最終的には沖縄の採用市場から撤退していき、逆に特に優秀ではない一般的な人材が残ることになります。

これは沖縄にとって良くない状況だと思います。求める人材を明確にせず、中途半端な条件で募集をすると優秀な人材は応募しません。結果、沖縄で働きたいけど魅力的な会社がないからと県外に移ってしまいます。

先ほどの企業の課題であるターゲット以外からの応募が多いというのも、このことが言えるのではないでしょうか。仮に30万円で募集をかけたら、まず前職17万円の人は応募しませんよね。
もちろん各企業にも給与事情があるので難しい部分もありますが、せめて市場相場は見ないといけません。

個人的に沖縄は賃金が低いため優秀な人材を逃していると思います。
是非目の前のコストではなく、中長期的な目標を達成する投資の一つと考え優秀な人の採用を考えてみてはいかがでしょうか。

私たちCavitteではそれぞれの企業が求める人材を採用するお手伝いを致します。

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