中小企業はなぜ人材が定着しないのか?それは「人事理念」が明確ではないからです。

企業にとって、事業を成功させるためには「人」が必要です。そのためどんな会社も、経営者も「人」を大切に考えていると思います。ただ、それと同時に一番の悩みは「人」でもあります。

なぜ、多くの企業が「いい人材が採れない」、「社員が意欲的ではない」、「優秀な人が辞めてしまう」など「人」について悩みを抱えているのか。

その理由は、企業の中で「人事理念」が明確になっていないからだと考えています。
そこで、ここではなぜ「人事理念」が必要なのか、どうすれば明確にできるのかを解説していきます。

目次

  • 人事理念とは
  • 人事理念が明確でない場合に起こること
    • 場当たり的な施策を行う
    • 人事施策に一貫性がなくなる
  • 人事理念の作り方
    • ①求める人材像を明確にする
    • ②社員の何を大事にして評価するのかを決める
    • ③どのように採用し育成していくのかを決める
  • まとめ

人事理念とは

「人事理念」とは、一言でいうと「会社の社員に対する考え方」を表したものです。
会社はどんな組織を目指すのか、社員に何を求めるのか、社員の何を評価するのかなど、会社を経営していく上での重要な「人」に関する道しるべを明文化したものです。

ただ多くの中小企業では、この「人事理念」が明確になっていません。あったとしても抽象的だったり、社員に知られてなかったり、人事制度や施策に反映されていなかったりします。

「求人を出しても応募がない」、「いい人材が採用できない」、「期待した人材に限って辞めてしまう」。
採用、育成、評価、処遇などその根本にあるのは「人」に関することです。

会社にとって「人」ほど大切なものはありません。

「人事理念」を明確にし、しっかり活用できれば、応募者が集まり、採用できる確率が上がり、優秀な人材が定着し、ひいては業績の向上にも繋がります。

「人事理念」を明確にすることで、会社の未来が変わり、そこで働く人の未来も変わるのです。

人事理念が明確でない場合に起こること

それでは人事理念がない、あるいは理念と運用が一致していない企業で起こることを、私の経験をもとにご紹介します。

場当たり的な施策を行ってしまう

会社の社員に対する考え方である「人事理念」がないと、場当たり的な施策を行うことがあります。

私が経験したなかのひとつに、「休みを多くしよう」というものがあります。昨今の働き方改革などにより、長時間残業や休日出勤を減らしていく流れになっており、求職者もワークライフバランスを重視しているということから、年間の休日を増やすことになりました。

ただ、これまでの働き方や業務の進め方などの中身は変わらず、また以前からある「長い時間働いていた人は頑張っている」という考え方を変えずに休日数だけ増やしたことで、逆に人件費が高騰しました。

この場合は「会社がどういう人を求め、何を評価するのか(ここでは労働時間ではなく、生産性を重視するなど)」というメッセージがなかったため、逆効果になったと考えています。

人事施策に一貫性がない

以前勤務していた企業で新卒採用を担当していた時の話です。その会社では求める人材について、「向上心を持って積極的にチャレンジできる人」を掲げていました。

しかし実際に採用した人は、人物的にも良く能力も高いのですが、どちらかというと大人しく、選考途中にあるグループディスカッションでは、最後まで役割が決まらないような人がほとんどでした。逆に積極的にディスカッションに参加している人は落選していたのです。

その理由として、表向きは「積極的にチャレンジできる人」を求めているのですが、実際は大人しく言う事を聞く人を求めていたのではないかと思っています(意図しているのか、意図していないのかは分かりませんが…)。

また管理職の方々を見ると、全体的に年齢の高い方が多く、また同じ役職を10年近く務められている方もおり、こちらについてもチャレンジングな人というよりは、会社の方針に従って長い期間頑張ってきた人たちという印象でした。

これは掲げている理念と実際の人事の運用について、一貫性がない対応であると言えます。

ここまで人事理念がない、あるいは理念と運用が一致していない場合に起こることをお伝えしましたが、このように会社の人に対する考え方がないまま施策を進めたり、理念に一貫性がないとどうなるでしょうか。

社員は会社への不信感を高め、やがて退職することになります。
景気や市場の変化があっても、会社としてブレない姿勢を貫くための「よりどころ」が必要です。

それが「人事理念」なのです。

人事理念の作り方

それではここからは「人事理念」の作り方についてお話します。実際に決めないといけない要素はいくつかあるのですが、今回はその基盤となる3つの要素について説明します。

①求める人材像を明確にする

「人事理念」のなかでも特に重要なのが求める人物像を明確にすることです。
これは採用や育成、評価など人事施策全体の根幹となるため、様々な角度から検討する必要があります。

経営者や人事担当者がよく言う「いい人を採用したい」の「いい人」とはどういう人でしょうか。

「元気があって、素直で、コミュニケーション力がある人」
「主体性があり、向上心がある人」

このような要件はよく耳にするのではないでしょうか。しかし、これではなかなか求める人材は採用できません。なぜなら明確なようで明確ではないからです。

ここからもう一歩踏み込んで、求める人材像を明確にして頂きたいと思います。例えば弊社では、「これまでの経験をいかんなく発揮し、向上心を持ちながら、周りを巻き込んで進んでいける人」を求める人材としています。

求める人材像が決まれば、それに沿った採用や教育、評価軸を決めていきます。

②社員の何を大事にして評価するのかを決める

求める人物像を明らかにしたら、次はその社員の何を大事にして評価するのかを考えていきます。

「給与ってどうやって決めればいいのか」

企業経営者であれば、必ず考えることですが、実際は何に対して給与を払うのかよくわからず、漠然とした考えで給与額を決めている会社がほとんどだと思います。

ただ、これでは評価するとき、また給与を決めるときに一貫性がなくなります。更に言うと社長の鉛筆なめなめな給与決定になってしまいます。これでは優秀な人材は辞めてしまいます。

実際に考えられる制度は以下のとおりです。

①能力主義
社員の仕事をする「職務遂行能力」に対して給与を払う考え方。高度成長期以降、日本の給与制度は、この能力主義が基本になっていました。

②成果主義
社員が出した「成果」に対して給与を払う考え方。バブル崩壊後、欧米型の成果主義の導入がブームになりました。

③行動主義
社員がとった「行動」に対して給与を払う考え方。能力は目に見えませんが、行動は実際に目にすることができ、再現性が予見できるため取り入れられています。

④職務主義
仕事の価値や責任の重さなど「職務」に対して給与を払う考え方。ポストによって給与がきまることから、外資系企業に多い給与制度です。

その他これとは別に、戦後から高度成長期にかけて定着した考えたもあります。

⑤年功主義
年々積み上げてきた「過去の功績」に対して給与を払う考え方

⑥勤続主義
社員の「勤続した年数」に対して給与を払う考え方。長く務めた人ほど高く評価されます。

⑦年齢主義
社員の「年齢」に対して給与を払う考え方。

何を大事にするかはそれぞれの企業で異なりますが、ほとんどはひとつの主義だけではなく、複数かけ合わせて運用することがほとんどです。

自分たちは社員の何を大事に評価していくのかしっかり考え、それをブレずに運用していきましょう。

③どのように採用し育成していくのかを決める

新卒採用と中途採用、どちらを重視しどう育成していくのかということも考える必要があります。

例えば「新卒はまっ白だから」、「一度にたくさん採用できるため効率がいいから」といった漠然とした理由で採用を行うと、失敗する可能性が高くなります。

ここで言う失敗とは、3年以内に離職されたり、思うような成長が見られないという事です。

やはりここでも「求める人物像」を明確にしたうえで、新卒採用か中途採用のどちらを重視するか決め、配置・育成方法を考える必要があります。

とりあえず新卒採用という曖昧な考えを見直し、長期的なビジョンを持って、会社が求める人材をどう採用しどう育成するかという仕組みづくりに力をいれていきましょう。

まとめ

多くの企業が「いい人材が採用できない」、「応募者が集まらない」、「優秀な人ほど辞めてしまう」などといった「人」に関する悩みを抱えています。

その理由のほどんどが、「人事理念」がなくそれぞれの施策のベクトルがバラバラであることが原因だと思います。

「人事理念」は会社と働く人のベクトルを合わせる、同じ方向に向かわせるものです。
是非一度それぞれの人事制度や各施策をチェックしてみてください。そして「人事理念」を明確にして頂きたいと思います。

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