新卒と中途、それぞれの離職理由に合ったリテンション(定着)マネジメントを取り入れよう

新卒・中途関わらず、社員の離職に悩みを抱える中小企業の経営者や人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
社員がすぐに辞めてしまうことによって、企業側にとっては採用コストの増加、イメージの低下、情報の流出などのマイナス面も多々あります。

今回は新卒社員・中途社員それぞれの離職理由について分析するとともに、リテンションマネジメントついてご紹介します。
リテンションマネジメントとは、「従業員が長く会社で働き続けられるように働きかける取り組み」のことです。
貴重な人材に長く働いてもらうためには、人材にとって有益となりうる環境整備などの対策が求められます。
採用難や人材の流出に課題を抱える企業が多い昨今、各企業が注力すべき取り組みとしてリテンションマネジメントの注目度が高まっています。

日本企業における近年の離職動向

まずは、日本企業における近年の離職動向について見ていきましょう。自社の状況や業態と照らし合わせて参考にしてください。

厚生労働省が発表している「令和2年雇用動向調査結果」によると、近年の離職率は15%程度で推移しています。
しかしこれはあくまでも企業全体の平均値であり、実際には下記のように業界によって離職率が異なる傾向にあります。

離職率が高い業界:宿泊業、飲食サービス業、教育業、小売業などのサービス業界
離職率が低い業界:インフラ業界、鉱業、採石業、製造業

例えば、宿泊業や飲食サービス業の離職率は50%を超え、人材の定着が難しい状態にあることがわかります。
一方で、電気・ガス・熱供給・水道業などのインフラ業界においては、10%前後と低い数値が保たれています。

出典:令和2年雇用動向調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/21-2/index.html

以上のように離職率は業態や各社の状況等によって左右されることも考慮した上で、平均離職率と比べて自社の離職率はどうなのかを判断することが必要です。

もし平均に比べて離職率が高い場合は、必要以上の採用コストがかかっていると言えます。
採用コストに関しては以下のブログをご参考ください

それでは、次に新卒社員と中途社員の離職理由とその対策をお伝えします。
ただし、前提として最初に着手すべきは自社の離職理由の振り返りとなります。
下記の内容はあくまで統計であり、理由は企業ごとに異なります。

新卒社員の離職理由とリテンションマネジメント

ここからは、新卒社員の離職理由と定着率向上施策について解説していきます。

近年の新卒社員に該当するZ世代(1990年代中盤から2000年代にかけて生まれた世代)は、
・一緒に働く社員や社内の雰囲気を重視する
・ワークライフバランスを重視する

などといった価値観を持っていることが特徴です。

そしてこれらの価値観は、離職理由にも大きく影響しているようです。

新卒社員の離職理由

Biz hitsによるアンケート調査によると、新卒3年以内に転職した理由のランキングは下記のような結果でした。

出典:「とりあえず3年」は根拠なし?新卒3年以内に転職した理由とおすすめの転職方法【男女498人アンケート調査】
https://bizhits.co.jp/media/archives/18170

特に回答数の多い上位3つの理由についてさらに深掘りして見ていきます。

1位:仕事内容が合わない

転職理由のランキング1位となったのは「仕事内容が合わない」という理由でした。

例えば、
「仕事を頑張っても成果が出ない、好きになれない、飽きてしまった」
など、自分の能力や志向とマッチしない場合に「合わない」と感じてしまう人が多いようです。

また、「技術職で採用されたのに営業に配属された」など、採用・入社時に聞いていた仕事ではなかったというパターンもあります。

2位:職場の人間関係が悪い

次いで多いのが「職場の人間関係が悪い」という理由です。
仕事を進める上では周囲とのコミュニケーションが必要不可欠であり、職場での人間関係は非常に重要な要素です。
新人いじめなど、明らかに悪意がある態度はもちろん、些細なことが重なってストレスになる場合もあり、その原因はさまざまです。
人間関係の悩みは仕事へのモチベーションが下がるだけでなく、会社に行くこと自体が憂鬱になる可能性もあります。

3位:勤務時間・休日への不満

そして3位は「勤務時間・休日への不満」でした。
残業や休日出勤が多い、有給がなかなか取得できないなど、疲弊し消耗するだけの職場環境ではストレスが溜まってしまいます。
すると当然、もっと労働環境の良いところで力を発揮したいと思うようになり、離職の原因となります。

新卒社員向けのリテンションマネジメント

会社の経営戦略としても見逃せない新卒社員の離職を防止し、定着率を向上させるためにはどのような施策が必要なのでしょうか。

① 入社前後のミスマッチを減らす

新卒社員の離職理由1位を見ても分かるように、新卒社員にとって仕事内容は非常に重要です。
入社後はどのような仕事を担うのか、どのように評価されるのかなど、ミスマッチが起こらないようにしっかり伝えていくことが重要です。

会社の実情に蓋をして、見栄えだけ良く見せてしまうことでギャップが起こり、離職に繋がる恐れもあります。
入社後のミスマッチを防ぐには以下のブログも参考にしてみてください。

② メンター制度を導入する

メンター制度とは、所属する上司とは別に、年齢の近い年上の先輩社員や、社歴が近い先輩社員が新入社員や若手社員をサポートする制度です。
新卒社員にとって「仕事の悩みを気軽に相談できる先輩社員がいない」「アラートをあげにくい」といった環境は非常にストレスが大きく、離職のきっかけにもなります。
そこで、新卒社員の精神的な悩みを解消するためにメンター制度を導入する企業は増えています。
日常的に相談できる環境があれば、新卒社員が抱え込んでいる悩みや不満に気がつきやすくなるため、離職防止につながります。

③ 労働環境の見直し

残業過多や有給の取りづらさなど、労働環境の悪さはどんな企業にとっても致命的です。
近年は働き方改革が進められてきたことで、長時間の残業や有給休暇の取得率は改善してきましたが、会社によってまだまだ実態は異なっています。
新卒社員を採用する会社としてどのような労働環境や福利厚生が正しいものなのか、どうしていきたいのかを今一度見直してみましょう。
社員が「私たちのことをしっかり考えてくれている」と思えるような積極的な姿勢を見せることで、新卒社員の定着率の向上が期待できるでしょう。

中途社員の離職理由とリテンションマネジメント

ここからは、中途社員について見ていきましょう。

中途社員の離職理由

株式会社リクルートキャリアの調査によると、「中途採用をしてもすぐ辞めてしまう」といった悪循環の原因は、中途入社者が入社後に戸惑う「職場の習わし」にあると解説しています。

この「職場の習わし」とは、自社の従業員が当たり前に使っている業界用語や社内用語、独自ルールや慣習など、自社の従業員であれば当たり前に知っていることです。
中途入社者はそれまで異文化の企業に在籍していたわけですから、新しい職場の習わしには当然戸惑ってしまいます。そして離職に至るケースが多いものと考えられています。

中途入社者が入社後に戸惑う理由ランキングは次のとおりです。

【1位】前職との仕事の進め方ややり方の違い(45.5%)
【2位】社内や業界用語等、専門知識が分からない(31.1%)
【3位】職場ならではの慣習や規範になじめない(24.6%)
【4位】仕事内容やミッションが考えていたものと違った(19.2%)
【5位】教育・トレーニング、研修環境が整っていない(17.1%)

中途入社者は社会人経験があることから、「知っていて当たり前」「できて当然」という先入観を持たれがちです。
企業は中途入社者を「即戦力」として採用することが多く、十分な社員教育などはせずにいきなり部門に配属することも多いのではないでしょうか。
十分な教育をあまり行わずに現場に配属したために、今までのやり方との違いに戸惑いが生じたり、既存社員との摩擦が生じたりすると、すぐに離職してしまう原因の1つになります。

(出典)株式会社リクルートキャリア「中途入社後活躍調査」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruitcareer/news/20200121_JP.pdf

中途社員向けのリテンションマネジメント

① 教育体制の整備

前述の通り、中途入社者にとって教育の不十分さは大きなストレスにつながります。
自社にとっては「知っていて当たり前」「できて当然」のことが、中途入社者にとってはそうではないということを常に意識する必要があります。
中途社員向けの教育体制を整備し、自社の仕事のやり方や慣習をしっかりと身につけていけるようサポートする準備をしておきましょう。

② 人事制度の整備

中途社員として入社したにも関わらず、頑張りが昇給やキャリアアップにつながらない環境ではモチベーションが上がりませんよね。
そのため、成果がしっかり報われるような人事制度を用意することが大切です。
中途社員はキャリアアップのために転職してきていることも多いため、自社でのキャリアパスが明確に見えるような仕組みを作ることが必要です。

人事制度を整備する上で、まずは人事理念が明確になっているかを見直して見ましょう。

③ 社内コミュニケーションの活性化

社内の人間関係が良好で、「居心地が良い」と感じる職場であれば定着率の向上も期待できます。そのため、従業員同士が密にコミュニケーションを取りやすいよう、「1on1(マンツーマンの定期的な面談)」などを導入するのも有効です。

まとめ

いかがだったでしょうか。
新卒社員と中途社員それぞれの離職理由や定着率向上施策について理解を深めていただけたのではないでしょうか。

私たちCavitteではRPO(採用アウトソーシング)事業からコンサルティング事業まで、人事領域を中心とした様々な課題に対して、全力でサポートしていきます。
社員の採用難や早期離職にお悩みの方は是非一度お問い合わせください。